インフレーション・ターゲッティングは有害だ byスコット・サムナー
http://www.themoneyillusion.com/?p=9099ひとつ前のポストのコメント欄でマーク・サドウスキーが英国について面白い話題を振ってくれた。
「11月、消費者物価指数は3.2%に、コア物価指数は2.5%に上昇した。税率が一定であると想定して算出される消費者物価指数は
1.5%の上昇だった。これに相当するコア物価指数の数字はないが、単純に引き算すれば0.8%だったということになる。つまり、
英国のインフレヒステリーはほとんどナンセンスかもしれない。このブログ周辺では、インフレ目標よりも物価水準目標が優れて
いて、さらに名目GDP水準目標はもっと良いと合意に至っていると思う。しかし、インフレ目標で行く場合は少なくとも「インフレ慣性」
も測定しなくては駄目だ。英国の総合物価指数は不安定なエネルギー及び食料という要素、そして二度の消費税引き上げで
深刻なまでに歪んでしまっている。インフレ慣性を正しく測定すれば、今の英国の本当の危険はインフレではなく、デフレだ。」
いろいろな情報を集約すると、BOEは英国の総需要の増加を抑えるためにこの5月に金融政策を引き締めようとしているようだ。
財政緊縮と同時にそんなことをすることがどれほど間違った方針であるかはいくら強調しても足りないくらいだ。そしてこれは
BOEのインフレ目標政策という目的によって正当化されている。これが悪いマクロ政策だと思うなら、その帰結はインフレ目標の
有用性を再考する必要があるということになるはずだ。BOEが5月に金利を引き上げることが正しい考えだとすると、Q4に財政
緊縮によってGDPが下落したことも良いニュースだったということになるよ。
マークのコメントはインフレ目標の一番深刻な問題の一つを指摘している。色んな異なるインフレ率の数字があり、論者によって
どれについての話なのかが違う。総合指数、コア指数、消費者物価指数、消費税固定指数、などなど。このため「ギャップ」ないし
グレーゾーンが作り出され、中央銀行はいったい緩和と引締めのどちらをすべきなのかがハッキリしなくなっている。
もし英国が名目GDP目標を採るなら、5月に引き締めをするという議論にはならず、逆に金利を0.25ポイント 引き上げて緩和するか、
もっとQEをするかの議論になるはずだ。
財政刺激で対処できると論じるリベラル陣営の人もいる。そうではない。財政刺激が効くのは総需要を引き上げられる時だけで、
インフレという前提が必要だ。(短期総供給曲線(SRAS)が完全に水平になることはありえない)。中央銀行が間違ったインフレ率
を目標にしているいときに、財政刺激で総需要を引き上げることはできない。それどころか財政刺激の追加によって総需要を
さらに傷めかねない。実際、英国は前労働党政権による財政刺激のために最高税率を50%に引き上げた。これによって、シティの
高給金融プロフェッショナルを優遇することで保たれていた、大陸諸国に対する供給面の大きな比較優位が失われたのだ。
金融引き締めと高い税負担は毒になる組み合わせだ。フーバー大統領に聞いてみればわかる。