強気の菅首相を追い詰める自民の深謀遠慮
http://seiji.yahoo.co.jp/column/article/detail/20110225-01-1501.html民主党議員16人の会派離脱届に続いて、2月24日には松木謙公農林水産政務官の辞表提出など次から次へと政権崩壊の危機に見舞われ、菅直人首相は崖っぷちに立たされている。だが、今のところ退陣するつもりがまるでないようだ。
16人の会派離脱届によって、政権がダメージを受けた翌18日、朝日新聞の報道で再び政権に激震が走った。
同紙の同日付夕刊が報じたのは、「菅直人首相を支持してきた民主党の有力幹部が公明党幹部に対し、首相退陣と引き換えに(2011年度予算)関連法案成立に協力を得られないか打診していたことがわかった」という内容。
菅首相側近が首相退陣を他党に持ちかけているのが事実ならば、政権はもう終わりである。リビアのカダフィ大佐の例をみても、政権幹部らが離反すれば、トップは失脚を免れない。
朝日新聞は匿名扱いにしているが、この記事に登場する、「首相を支持してきた民主党の有力幹部」とは仙谷由人代表代行、打診を受けた「公明党幹部」というのは漆原良夫国対委員長のことである。2人は15日に会談した。
菅首相退陣について、実は仙谷氏はひとつの可能性として指摘しただけのつもりだったようだ。しかし、漆原氏が公明党幹部や自民党の逢沢一郎国対委員長に会談内容を伝えたことから、
あっという間に与野党幹部の間を「退陣打診」の情報が駆けめぐった。
「普通の人なら退陣」
菅首相周辺議員は、退陣情報にあわてたが、反執行部の小沢一郎元代表系議員たちの反応は違った。18日午後、民主党参院幹部は記者団にこう言い放った。
「仙谷さんが(退陣のことを)言ったかどうか知らないが、自然な発想だ。退陣しかない。こんな状況では、普通の人なら、そう考えるだろう」
だが、菅首相は「普通の人」ではなかった。同日夕、記者団に「首相の首を替えたら賛成するとかしないとか、そういう古い政治に戻る気はさらさらありません」と辞任を拒否した。
一方、この日の夜、首相公邸にいた菅首相のもとに、民主党の岡田克也幹事長、安住淳国対委員長、枝野幸男官房長官らが集まった。
この情報を聞きつけた野党や民主党内の反執行部系議員の多くは、退陣騒動への対応が協議されたものだと考えた。菅首相もさすがにあわて始めたのだろうと推測したわけだ。
ところが、公邸での会合は実際には政府・与党提出法案の国会審議に関する打ち合わせだった。ずいぶん前から、この日に会合を開くことが決まっており、緊急に集まったわけではなかった。
会合は夜9時すぎから始まった。席上、安住氏は予定通り、100本を超える法案の処理状況について延々と説明を続けた。
1時間半を超える会合の途中で、多忙な政務と連日の政局激動に振り回されて疲労の極致に達していた出席者は、ほぼ全員が居眠りを始めてしまった。たった1人を除いて。
お世辞にもおもしろいとは言えない安住氏の説明が続く中、目を見開いて最後まで耳を傾けていたのは菅首相だった。同席者はその表情を、「執念のようなものを感じた」と評した。
菅首相はまだ政権維持をあきらめてはいないのだ。
奇妙な小康状態
もちろん、菅首相がどれほど政権維持に執着していようとも、現在の菅政権が危機的状況にあるのは間違いない。
政権の命運を左右するとみられる1番大きな不安定要因は、国会審議の最大の焦点となっている2011年度予算案と関連法案の行方だろう。
逆に言えば、これらの議案の成立を阻止することによって政府・民主党を追い詰めようとするのが野党の常識的な戦略だ。
ところが、これだけ菅政権がボロボロになっているにもかかわらず、これまでのところ意外にも国会での予算案審議は円滑に進んでいる。
もちろん、多少の審議空転や与野党対立の場面はあったが、菅首相が退陣間近と言われるほど政権運営に苦しんでいるわりには、国会は順調だと言っていい。
この奇妙な小康状態は、決して与党・民主党の国会運営が巧妙であり、野党・自民党の戦術が稚拙であるということを指し示していない。
円滑な審議の背景には、ある狙いがあって予算案審議にあまり抵抗しない自民党と、そうした自民党の意図を逆手にとって国会運営を有利に進めようとする菅政権との水面下の激しい駆け引きがあるのだ。